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かたが こる

棋譜をだらだら並べる人の話

家の中の重たいものをなるべく片付けてみた。夏の装いとまではいかないけれど、それなりに季節を渡る準備に取りかかれたはずだ。頭上を渦巻いている困難に関して授業で聞いて思った事があったので書こうと思う。 恋とはどんなものかしらと言った時に、相手の…

好意を履き違えがちなまぬけの話

最終面接の日に伺ったがらんとした本社ビルの一階で、他の就活生に取り残された自分はぼんやり観葉植物の葉の裏を眺めていた。時刻は16時過ぎで、大手町のビル群を貫く夕陽と言うには明るすぎる日差しが人気の無いフロアを満たしていた。目の前ではペッパー…

串焼き屋に入ってみたい人の話(閑話)

↓ 誕生日までにこれを心がけてみようリスト 1. 姿勢を正して生活する(前屈みになりがち、背筋ぐにゃりがち) 2. 人の好意を試すような言動を慎む(うっかりしがちだから会う前から気をつける) 3. 準備を怠らない(後々何も残らなかった感覚に落ち込みがち…

冬と眠る人の話

どうしても眠れない夜は、自分がそのままベランダへ出て行って、塀を越えて向こう側へ墜落する想像ばかりしていた。思春期の私は二段ベッドから下りていく際の梯子のひんやりとした感触や、窓へ辿り着くまでに自らが普段使っている椅子の背へ触れる感覚、施…

車内で本を読む人の話

文化の日の箱根たぶん行きの列車で車窓を眺めつつ斜め読みしていたのがレイモンド・チャンドラーのロング・グッドバイで、そのおかげでトンネルを抜けた先の集落の近くに聳える化学工場だとかひと気のないニュータウンだとか、果ては登山列車から覗く山道や…